「竹取物語」(角川書店編)

千年の時を超えた不滅のエンターティメント

「竹取物語」(角川書店編)角川ソフィア文庫

原文を読まなければ
古典を読んだことにはならない。
そんな堅いことを言わないでください。
国語学者でもなければ、
今どき古文をすらすらとは読めません。
いいじゃないですか、
外国の作品も
和訳したものを読んでいるのですから。

私は角川文庫から出ている
ビギナーズ・クラシックス
日本の古典シリーズが大好きです。
縁の薄かった古典の世界を、
これだけ身近に
感じさせてくれるのですから。
まず訳文、
それから原文、
さらには解説、
おまけにコラム、資料、図版等、
至れり尽くせりです。

このシリーズ、私はまだ
十数冊しか持っていませんが、
いずれはすべて購入するつもりです。
そしてそれらを当ブログで紹介し、
中高生に薦めていきたいと
考えています。

その中でもイチオシは
なんといってもこの「竹取物語」です。
誰もが知ってるけど、
誰もがしっかり読んだことのない、
日本の古典の名作中の名作です。

光る竹から誕生したかぐや姫。
あっという間に絶世の美女に成長する。
姫ほしさに群がる求婚者。
その最終選考に残った五人。
結婚条件として
無理難題を課されて全員破滅。
最後は時の帝まで参戦するも
あえなく敗退。
ついに姫は月へと帰還する。

幼稚園児の頃、
紙芝居で教えてもらった筋書きと
あらかた同じなのですが、
受ける印象は全く違います。

一つはかぐや姫像です。
まったくもって策略家です。
加えて冷酷無情です。
結婚が嫌ならはっきり断ればいいのに、
絶対に完遂できない条件を提示し、
求婚者たちが苦しむ様を見て
楽しんでいます。
中納言が失敗して死んでしまっても
「少しあはれ」で終わっています。

もう一つは盛り沢山な趣向です。
ユーモアや駄洒落が
いたるところに顔を出します。
モデルに立てた権力者を罵倒し、
辛口の風刺を効かせているところは
ブラック・ジョークといえます。
昇天する際に
身につけた羽衣の効力により、
地上界の記憶が失われる様は
まさにSFの先駆けでしょう。

こんな素敵な、
胸がドキドキする物語が
千年も前につくられていたとは!
平安の日本文学界恐るべし。

古典なんて
いかにも勉強っぽくてキライ!
という少年少女たちに、
千年の時を超えた
不滅のエンターテインメントを
味わわせたい!
あっ、もちろん大人もどうぞ!

(2018.12.17)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA